CREATURA とは、なにか?

 美しい4つのシラブルをもつ、クレアツーラは、現代イタリアでつかわれている女性名詞の単数形です。日常で使用される名詞は、ほとんどが3音節以下ですから、とくべつな意味を持ちそうです。複数形は、CREATUREで、英語のクリーチャーとおなじ綴りになります。どちらもラテン語から派生した「被造物」を指す言葉ですが、意味合いはすこし違っているようです。イタリア語で、神(DIO)が男性名詞という事実を踏まえると、ボーボワールの「第二の性」が脳裏に浮かぶるのは自然です。フランス語の créature(クレアチュール)は、魅惑的な女性を指すばあいもあるようです。イタリア語でおなじ用法も存在しますが、この言葉からエロスは感じとれません。弱さ、無垢、依存、幼さ、などが、語彙に染みついているからだと思われます。魅惑的な女性という範疇で検討するなら、楊貴妃と西施くらいの違いはあるようです。両者は、いずれも傾国の美貌です。楊貴妃は、肉感的で、エロスによって大国を破滅にみちびきます。西施は、薄幸の美女です。国をまもるために、敵国に差し出されます。この言葉を思いついたのは、日本最北端の離島で医療活動をしていたときでした。大まかな経緯は、作品番号23.「医者になる」ですこし語られています。

 クレアツーラは、サイエンスフィクションの題名です。長編小説は、43.「美神 ヘレナ」。49.「神恕 クレアツーラ」。64.神栄 グロリア。65.神壊 コラプス。という完結した小説から重層的に構成されています。64.65.は、未完で、生きているうちに完成できるか分からない状況です。翻訳熟語として、神恕(しんじょ)という語彙をあててみました。こうした小説を書き始めて、かなりの年限がたったころ、G・ベイトソンが、クレアツーラという言葉をつかっていることを知りました。気になって、古書店で購入しました。残念ながら期待に添う内容ではなく、7000円という値段のほうが記憶にのこりました。彼の欠点は、勉強不足で、致命的だと思いました。「精神と自然」だけでやめておけば、偉大な思想家でいられたのにと考えると、引き際はとても難しい問題です。

 小説のなかで、クレアツーラは、異次元の星の名前で、また、そこで生息するほぼ唯一の生物?の名称です。さらに、寄生されたヒトも意味しています。私のなかでは、とてもふかい言葉になっています。

小説は、どうやってできるのか?

 ニーチェが霊感をうけて書いたといわれる「ツァラトゥストラ」は、4部構成になっています。原稿用紙に換算すると、全体で1200枚ほどと思われます。彼は、各部300枚を2~3週間で執筆したといわれます。たとえ本当だとしても、ニーチェは、この作品の構想をずっと以前からかかえていたはずです。また、3週間で終わりになったのではなく、繰りかえし推敲され、この形式に落ちついたと考えるべきです。小説は、そんなに簡単には書けません。

 私は、退職後に本格的な創作活動をはじめました。著作するとは、ある課題について充分に考え、文献を検索し研究することです。1年を8~9週の6期に分割し、どの作品にどの程度時間を割くか方針を決めないと、進めることができません。90分を1単位として、週に40単位ほど充当してきました。作品を書くには、ノートが必要です。創作の開始時に、全容を知ることはできません。構想を決めて考えていっても、いきづまる作品はたくさんあります。また考えているうちに、分岐的に増えていくばあいもあります。さらに、すっかり見すてていた構想が、あるとき光明が差して復活するケースもでてきます。つまり、個別な項目ごとに創作ノートをつくるのは、ほとんど不可能ということです。そこでA4サイズのノートを、見開きページごとに作品番号を当てて考えてきました。現在ノートは55冊あり、総ページは11151です。とうぜん、目次、索引の役割をはたすべつのノートが存在します。たとえば、作品番号12.「アリアドネ」は、通算、21期。総単位数、663。創作ノート、A3サイズ、207枚という数字になります。およそ1000時間、この作品のために費やした計算になります。これは純粋に創作にあてた時間で、文献を調べ書籍を読む時間はふくまれていません。それだけの思考を重ねた結果だということを理解していただけると、作者としては嬉しいです。