カテゴリー: 金と通貨

  • 円安

     トルコ共和国と日本は、資源が乏しいという点では似た部分があります。リラ建てトルコ国債は、25%以上の利率がつき、魅力的な投資先と紹介されたりします。しかし、円をリラに換え、また満期になったとき、リラから円にもどす手数料をとられ、みかけほどには利益がでません。さらに肝心な点は、「ゴールド」で話題にしたように、25%は、信用リスクということです。この30年でトルコの株式は、1000倍になりました。しかし、通貨のリラはドルに対して50分の1になっています。25%くらいでは、利益がでないのは当然です。トルコリラが6桁のデノミをした事実は、重大です。日本円でいうなら、100万円が1円になるようなインフレが起こったのです。

     アメリカがイランを攻撃し、リスクオフになっても、円高にならない事態は、とても危険なサインです。為替の月足チャートをみれば一目瞭然ですが、160円を超える円安になると、もう節目がありません。1980年代に揉みあった240円まで、テクニカル的には真空地帯です。その領域を超えると、1970年代以前の固定相場、360円になってしまいます。円安になることは、日本が貧しくなるのと同義です。外国人の旅行者は来やすい環境になりますが、物価が上がり一般庶民にとっていいことはほぼないでしょう。

     さらに恐ろしいのは、新政権が、さらなる円安を望んでいるらしい事実です。日銀の利上げを抑制し、審議会に円安容認派を送りこもうとしています。円安を止めるには、金利を上げる必要があります。しかし金利上昇は、膨れ上がった国債の利息が増加することを意味し、財政破綻が現実味を増します。つまり、どうにもならない状況が目前に来ています。激しいインフレにおちいる公算は、充分に考えられます。トルコは観光が主産業ですが、日本もおなじになる可能性があります。

    「総理。これ以上、円安になったら、どうするつもりなのですか?」

    「大丈夫です。株価を上げますから、安心してください」

    「株を買えない人は、どうするのですか?」

    「ニーサを、拡充したでしょう。政府は、やるべきことはしています」

    「年金は、どうなるのですか?」

    「物価とおなじペースで上げることは、お約束できないでしょうね」

    「それでは、貧しい者は、食べていけないのではないですか」

    「政府がきちっと株価を上げるのですから、ご自身で財産をつくれなかった責任は、ご自分でとってください。日本は、自由主義の国家です。ご自分の責任を、政府になすりつけないでください」

  • ゴールド

     2026年2月時点で、米国債総額、6000兆円。米国株式総額、8000兆円。ここから派生した商品は、おそらく、この10倍以上と推測されます。そこまで含むと思考範囲を完全に逸脱しますので、ある程度、単純化しないと考察ができません。未上場株式、不動産、お金のあるときに価値がみいだされる美術品などは、除外して考えることにします。全世界の債権、株式総額が5京円とするなら、アメリカのシェアは、28%と考えられます。金は、22万トンが世界に出回っています。10%は工業用、30%が宝飾用、残りの60%が、ゴールドという資産だと考えます。1g、25000円とすると、総額は5500兆円になります。ここにも派生商品がありますが、債券、株式に比べれば比較にならないほどすくないはずです。なぜなら、価格が付けられている金は、全体量22万トンからみれば、ごく一部にすぎないからです。単純化して、世界総資産、5京円と、金の総資産、5500兆円の比率が適切なのか、考えてみたいと思います。

     人類の歴史では、一定規模以上の国家は、金を通貨の裏付けにしてきました。ローマ帝国でも、中国の歴代王朝でも、一般通貨は銀でしたが、その価値は、金によって裏付けされました。日本も、同じように小判、大判が信用を支えてきました。国々が財政基盤となる金を集めるために莫大なコストをかけたことは、銘記するべきだと思われます。このように金が果たしてきた役割を考えると、1971年、ニクソンの金兌換性廃止以降の世界は、歴史上きわめて希な時代に突入したと考えられます。1944年のブレトン・ウッズ協定によって、アメリカは、基軸通貨をポンドからドルに変更することに成功しました。これによって、アメリカは紙を印刷し、国債と名づけて発行し、他国に購入させることで、労働力をふくむ消費財との交換が可能となったのです。まさに、無から有を生み出すことに成功しました。世界から富を簒奪してきたのは、基軸通貨をもつアメリカだったのは間違いない事実です。この状態をつづけてきて、いまさら、貿易赤字が不均衡といいだすのは、あまりに無見識な発言です。

     米国債10年ものの金利は4%程度です。金は利息をうまないから、投資対象としては補足的とよく言われます。識者もそう主張します。しかし、利息をうまないという真意、核心は何でしょうか?。もし米国債が4%の金利を付けないと、格付けは、CCC、デフォルトとなってしまいます。格付けの低いハイイールド債が高い利息をしはらわないと市場で買い手をみつけられないのとおなじ原理で、4%は信用コストと考えるべきです。金は、若干の管理コストが発生しますが、信用コストは0なので利息がつかないと考えるべきでしょう。仮に国債と金を比較するなら、金利ではなく、購買力でしか検討できないはずです。

     この話題は、かなり奥深いので、とても一度のコラムでは論じ切れません。とはいっても、数字を並べ立てるだけでは、読者にあまりに失礼です。ですから、結論の一部を話しておきます。アメリカの金保有量は、8133トン、総量の4%にすぎません。世界の中央銀行の保有量、35000トンに対しても、23%にすぎません。米国が、世界の28%の金融資産をもっているなら、金も総量22万トンの28%保有していれば、ドルの裏付けとして機能した可能性があったはずです。ここに、大きな難題が潜んでいます。1971年以降のドル体制は、米国債を中心とした信用構造によって成立しました。金価格の上昇は、ドルの信認不安を反映するひとつの尺度です。イランを軍事攻撃することによって、金はふたたび高値をめざしています。これは、アメリカにとってまったく望まない展開です。

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