2026年2月時点で、世界の代表的な金融資産として、米国債総額は6000兆円で、米国株式総額は8000兆円です。流動性にとぼしい不動産は、ここから省くことにします。金融資産には、上場株式、未上場株式などの株式現物。一般的な国債、社債、地方債、財投債、事業債などのストレート債券。預金。銀行貸し出し(ローン)。レバレッジはつかない、投資信託、ETF、MMF。売掛金、買掛金、手形などの商業信用。中央委銀行のマネタリーベース。などが考えられます。いま挙げた商品は、レバレッジをもたず、明確な担保によって裏づられているので、これらを「担保明確化資産」と定義します。最初に省かれた不動産の一部は、リートという形式を取って、ここに組みこまれています。 全世界の担保明確化資産は、2026年時点で20京円と推定されます。このうちアメリカのシェアは、35%程度と考えられます。
金現物は、22万トンが世界に出回っています。10%は工業用、30%が宝飾用、残りの60%が、ゴールドという現物資産だと考えます。1g、25000円とすると、総額は5500兆円になります。単純化して、担保明確化資産、20京円と、金の総資産、5500兆円の比率が適切なのか、考えてみたいと思います。
人類の歴史では、一定規模以上の国家は、金を通貨の裏付けにしてきました。ローマ帝国でも、中国の歴代王朝でも、一般通貨は銀でしたが、その価値は、金によって裏づけされました。日本も、おなじように小判、大判が信用を支えてきました。国々が財政基盤となる金をあつめるために莫大なコストをかけたことは、銘記するべきだと思われます。このように金が果たしてきた役割を考えると、1971年、ニクソンの金兌換性廃止以降の世界は、歴史上きわめて希な時代に突入したと考えられます。
1944年のブレトン・ウッズ協定によって、アメリカは、基軸通貨をポンドからドルに変更することに成功しました。これによって、アメリカは紙を印刷し、国債と名づけて発行し、他国に購入させることで、労働力をふくむ消費財との交換が可能となったのです。まさに、無から有を生み出すことに成功しました。世界から富を簒奪してきたのは、基軸通貨をもつアメリカだったのは間違いない事実です。この状態をつづけてきて、いまさら、貿易赤字が不均衡といいだすのは、あまりに無見識な発言です。
米国債10年ものの金利は4%程度です。金は利息をうまないから、投資対象としては補足的とよく言われます。識者もそう主張します。しかし、利息をうまないという真意、核心は何でしょうか?。もし米国債が4%の金利をつけないと、格付けは、CCC、デフォルトとなってしまいます。格付けの低いハイイールド債が高い利息をしはらわないと市場で買い手をみつけられないのとおなじ原理で、4%は信用コストと考えるべきです。金は、若干の管理コストが発生しますが、信用コストは0なので利息がつかないと考えるべきでしょう。仮に国債と金を比較するなら、金利ではなく、購買力でしか検討できないはずです。
この話題は、かなり奥深いので、とても一度のコラムでは論じ切れません。とはいっても、数字を並べ立てるだけでは、読者にあまりに失礼です。ですから、結論の一部を話しておきます。アメリカの金保有量は、8133トン、総量の4%にすぎません。世界の中央銀行の保有量、35000トンに対しても、23%にすぎません。米国が、世界の35%の金融資産をもっているなら、金も総量22万トンの35%保有していれば、ドルの裏づけとして機能した可能性があったはずです。ここに、大きな難題がひそんでいます。1971年以降のドル体制は、米国債を中心とした信用構造によって成立しました。金価格の上昇は、ドルの信認不安を反映するひとつの尺度です。イランを軍事攻撃することによって、金はふたたび高値をめざしています。これは、アメリカにとってまったく望まない展開です。
