ゴールド、02

 新年度に入りましたので、ゴールドの価格分析をしてみたいと思います。

 まず、昨年度のはげしい値動きから振りかえってみます。NY金先物は、2025年4月、3055ドルでした。10月と2026年1月に調整がありましたが、3月には5450ドルという歴史的な高値まで上昇しました。その後、アメリカによるイランへの空爆を材料に、短期間で4120ドルまで売られました。高値から25%の下落は、調整という幅を超えていました。しかし、長い髭を残して上昇に転じ、先週末は4680ドルまでもどしています。最高値からは、85%の水準です。2026年1月末の暴落もはげしかったですが、3月の急落25%は、記憶にないほどの暴落でした。なぜ、これほどの変動が生まれたのか考えてみたいと思います。

 急落の原因が急騰だったのは、誰にでも分かる道理です。問題は、金価格の上昇トレンドが崩れていないことです。各国の中央銀行が着実に金を積み増し、ドル離れ、スタグフレーションの予兆など、金価格が上昇する構造に、まったく変化がありません。今後も上昇する予想はあっても、下落の可能性を語るアナリストは極端にすくないのが現状です。米国、中国、日本をはじめ世界中の国家が財政余力をなくしています。すでに通貨安競争がはじまっており、原油高がさらに足かせとなりインフレ懸念は現実味を帯びています。

 現況から考えるなら、金を売らねばならない人びとがいたとしか考えられません。米国株式の代表的な指数、US500 は2月から3月にかけて約10%下落し、時価総額にして4.5兆ドルがうしなわれました。恐怖指数、VIX も1月の15から25へと65%上昇しており、レバレッジ勢が追いつめられたことは数字からもあきらかです。さらに、3月のGLD(SPDR Gold Shares、世界最大の金ETF、現物市場)では50億ドル規模の資金が流出しました。これは、現物需要の減退ではなく、換金売りが起きたことを裏づけています。US500の週足チャートが、底がみられない状況で推移するなかで売らざるを得なかった者たちがいたのです。レバレッジ勢は追いつめられ、ヘッジとして保有していた金を益出しにつかったことが暴落の大きな原因でした。それに乗じて、ショート勢(売り方)が利益をあげ、ロング勢(買い方)の損切りも重なって25%という大幅な下落につながったと思われます。もちろん、期末要因も加味されたはずです。まとめるなら、2026年3月の急落は、株価維持のための換金売りが中心だったと考えられます。

 金価格の上昇は、ドル不安の表現です。安全資産として、米国債が買われたのではありません。米国10年債権は、2月から5%程度下げています。表裏一体の米国10年物金利は、この間に10%程度上昇しています。つまり、現金化されただけです。その現金を、どう使うのかが焦点になってきます。

 金利上昇によって金が売られるという陳腐な説明は、年後半には通用しなくなると思われます。通貨安競争がはじまった時点で、金利と金価格の関係は断ち切られます。金利上昇は通貨への不信感の表現であり、金売りの理由にはなりません。この部分は、稿を改めて考察したい問題です。

 底をつけた以上、ふたたび4120ドルまで売りこむことは困難です。おそらく6月くらいには、5500ドルへの挑戦がはじまると考えられます。さらに、今年度中に7000ドルを予想します。この辺のくわしい話は、一度期にはできません。

 最後に焦点となる、金はいくらを目指すのか、を付けくわえます。

ゴールド、01」のコラムで話したとおり、派生商品をふくまない全世界金融資産は、2026年2月時点で、5京円程度と思われます。金22万トンの総額は5500兆円です。おそらく金総額は、5京円をめざすと考えられます。1972年のニクソンによる金兌換制度が廃止されてからの50年間は、人類にとって異常な時期でした。ドルの基軸通貨は簡単には壊れなものの、大きな変革の時をむかえています。歴史的には、ローマ帝国も、歴代の中国王朝も、全金融資産の10~20%程度の金を裏付けにしていました。世界の派生商品は、世界金融資産の10倍を超えると考えられています。したがって、金価格は5京円をめざすことになります。つまり、NY金先物は、50000ドルになる可能性があります。

 ここで重要なのは、インフレを抑制することが困難な状況ですから、世界金融資産は大きな変動を繰りかえしながらも、名目的には上昇します。それに応じて、金はさらに高値をつけていくことになるはずです。

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