ゴールド、04

 このコラムでは、金価格がどのように決定されるかについて考えてみようと思います。金は世界商品なので、為替さえ勘案すればどこで買っても同じだろうと普通は思います。不動産については、場所によって値段が違います。いまは世界中でラーメンが食べられますが、値段は為替だけでは説明できません。

 金の代表的な価格は、NY金先物市場とロンドン金現物市場です。NY金は、1トロイオンス(約31.1g)の値段です。しかしながら、NY金価格÷31.1×USD/JPY(為替)で得られた数値が、日本の金価格になるのではありません。値段を決めているのは、田中貴金属、大阪取引所、堂島金相場などが代表的ですが、それぞれ独自の数字をだしています。こうした差異があるのが、世界商品という意味です。なぜなら各市場で、流動性、需給、信託構造、プレーヤー構成が違っているのです。金は、複数の市場が重なりあう世界商品です。

 個人が買えるのは、金ETFや投資信託がいちばん手軽です。しかし、購入した銘柄や投信が、金現物なのか、証書なのかは注意が必要です。現物でないものを、ペーパーゴールドといいます。NY金やロンドン金に連動する債券と考えればいいでしょう。こうした信託債券が無効になる事態が起これば、現物金も無事ではいられません。しかし、扱っているものが違うことだけは知っておくべきでしょう。ETF銘柄としては、現実的には金を引き出せないが、現物金の裏付けをもつ、1326.SPDRゴールド。派生商品、デリバティブ、ペーパーゴールドに分類される、1328.NF金価格、1372.金ETF、314A. ISゴールドなどがあります。現物金を実際に引き出せるETFとしては、1540.純金信託が有名です。金融派生商品に該当するペーパーゴールドは、運営する信託会社の信用で成立しています。ですから金に投資しているつもりでも、構造的には信託企業に資金を振り分けていることになります。

 金の現物を購入した場合、売買手数料がかかるだけでなく、自宅まで運送し、保管しなければなりません。金庫に入れて置いても、かなり心配です。それなら、1540を購入する方がずっと理にかなっています。市場が開いているかぎり、取引も自由です。信託報酬として、年に0.539%を支払わねばなりませんが、自宅で管理するよりずっと増しです。

 1540.純金信託の値段の決め方について、このコラムで話題にしたいのです。この銘柄は、ときに乖離を起こし、15%ちかく大阪取引所よりも高値をつけたことがあります。この理由について、多くの人には誤解があります。1)マーケットメーカーが貧弱で、乖離しだすと役割を放棄する。2)急激に上昇する場面では、現物金を調達する速度が間にあわない、などです。なぜ乖離するのかたずねると、おおむねこうした答えがかえってきます。

 この銘柄の性格を、もう一度考え直す必要があります。

 1540信託の株数は、7000万株です。ほんらい1株が、現物金1gでしたが、信託料金が差し引かれた結果、現在は金、0.936gに相当するといわれています。大雑把に言って、7000万g、つまり70トンの金を三菱UFJ信託がまず用意したのです。この固定ストックを、市場参加者がNY金先物と為替を参考にして勝手に値段を付けるのが、この銘柄の意味です。ですから、2)の答えは明らかに違っています。金現物は、総量がすでに決められており、値段が上がったからどこからか運んでくるという性格の信託ではありません。ついでにお話しするなら、三菱UFJ純金ファンド「ファインゴールド」という投資信託があります。こちらも、現物金を裏付けにしています。この価格は、1540に連動します。新たな購入があれば、この信託では口数の増加にみあう金現物を積みますことになります。

 さらに、マーケットメーカーは、用意されていないと考えたほうが理屈にあっています。つまり端的に言うなら、1540の金価格が独自に存在するのです。ですから、この銘柄の特殊事情によって乖離が生まれるのです。ショート(売り)の買い戻しが原因です。金はストック商品ですので、需給が偏ると価格がゆがむのです。私は、この銘柄と大阪取引所の金標準先物との差を毎日確認しています。現在は、かなり割安に放置され、96.5%くらいで取引されています。2月5日には、101%でした。通常は、おおむね97%くらいの価格で推移しています。

 この差が、世界商品という金の本質を意味しています。

投稿をさらに読み込む