,

弥勒

 作品番号31「弥勒をみつけた日」第3章「弥勒」は、1)生誕物語、2)現世創出物語、3)幽閉物語、4)脱出物語、5)転生物語、の5節から構成されています。

 この小説の履歴は非常に古く、着想は1970年以前と思われます。完結して残っている最古の小説は、作品番号30「アルジェの朝」です。

 創作活動は、幾度もやめようと考えて原稿を燃やしています。

 それでも残っているのは、幾度もくり返し着想したからだと思われます。

 最初は、「檻」という題名でした。ある日、男は、自分が檻に囲まれているのを発見します。檻のなかでは、チャンピオンになれます。しかし、気がつくと出てこられなくなるという物語です。幾度も改訂され、「檻の男」という70枚くらいの小説となり、最終的に不完全作品集に収録されました。不完全に分類されたことは、完全作がつくれると思った証拠です。

 この小説は、「アイオン」と名づけられ170枚くらいの作品になりました。これを改訂して、「ニルヴァーナ」がつくられています。17期、420単位(630時間)、創作ノート140枚という作品です。さらに、「弥勒をみつけた日」と改題されました。

「檻」、「檻の男」の段階では、仏教思想も充分には理解していませんでした。グノーシスについては、ほとんど無知でした。「アイオン」に改編される過程で、こうした思想が組みこまれていきました。

 私の小説は、「自己の発見」、「SELFの顕現」というテーマが圧倒的に多いので、ゾロアスター教は基礎的部分になります。あらゆる宗教は自己と向かい合う行為ですから、小説の枠組みに取りいれられます。なかでもグノーシス思想は、たいへん相性がいいのです。組織よりも個人を扱い、抑圧される側に立っているので、現代にも充分に当てはまります。

 グノーシス思想にかんしては、たくさんの書籍を読みました。しかし、起源を仏教にもとめる文献はみつけられません。グノーシスは、よく知られているとおり、いまのクルド人が住んでいる辺りで興隆しました。彼らが国家をもたなかったことと、ふかく関係していると考えています。クルド人は、抑圧する側に立った歴史がない可能性があります。この思想は、抑圧された者たちのもので、あきらかに現世否定型宗教といえます。

 仏教は、圧倒的なヒンドゥー教をまえに、現実に発展ができませんでした。そこで、この世を牛耳っている勢力、つまりバラモン階級を欲天の頂上に置いたのです。波旬が支配する「他化自在天」とは、他人の欲望を自在にあやつり、世の中を動かすことで喜びをえるという意味です。

 現代の政治家とそっくりです。

 グノーシスには、さまざまなタイプがあります。こまかく分ければ、切りがないほどだろうと思います。具体的には、現世の神は偽物で、彼らを創造した真の創造主がいると考えます。神は、自分たちを創造したものをつくった至上神がいることに嫉妬して、創造者を幽閉していまいます。ですから、この世を救済するのに、現世では救世主が捕まっているという神話をうみます。現世の神は、デミウルゴスとよばれます。彼がつくったものが、アルコーン(現世の支配者)です。

【仏教】六欲天【グノーシス】宇宙論【性質】
第六天(他化自在天)波旬デミウルゴス欲望世界の支配者、偽の創造主
第五天(化楽天)アルコーン層中間支配者
第四天(兜率天)弥勒アルコーン層(高位)中間的神性、未来仏の待機層
第三天(夜摩天)アルコーン層半神的存在
第二天(三十三天)帝釈天アルコーン層下位支配者
第一天(四天王天)アルコーン層(最下位)物質界に近い支配者

投稿をさらに読み込む