ゴールド、05

 金は、利息を生まないので、金利上昇局面では売られる。

 アナリストたちは、この言説を頑迷に繰りかえしています。しかし、どのように考えても、まったく腑に落ちません。こうした迷信がどうどうと語られる背景について、考察してみたいと思います。

 金利とは、信用コストです。借り手のばあい、返済能力があるのかが問われます。明確な裏付けをもつと判断されれば、10年ものの住宅ローン固定金利、2.5%くらいで金融機関から借りることができます。信用審査に合格しなければ、サラ金(消費者金融)を利用することになります。無担保で、早く借りられますが、15%以上の年利がかかります。返済能力が問題視されればれ、闇金融しかのこっていません。このばあい、年率100%を覚悟しなくてはなりません。つまり利率は、借り手の信用コストといえます。

 発行体が資金を調達するときも、おなじ理屈になります。信用力が低ければ、利率をまさねば資金を獲得できません。こうした信頼度は厳密に数値化され、債権はすべて格付けされています。発行体の信用度が低いものは、利率を高く設定しないと市場で承認されません。2026年4月7日現在、米国債10年ものの金利は、4.35%です。投資適格社債(優良企業)は、5.0%~6.2%。より信用力が劣るハイイールド(ジャンク)債権は、8~9%くらいです。

 返済が長期にわたるばあい、発行体の資金繰りの悪化や倒産リスクが、どうしてもつきまといます。期間の長い債権は、短いものより利率を高く設定せざるを得ません。2年もの米国債は4.365%。10年ものは、4.356%。30年ものは、4.47%です。

 金がここまで買われるのは、宝飾用の需要ではありません。ロシアは、ウクライナを侵攻し、ドル資産を凍結されました。各国の中央銀行は、こうした金融制裁を恐れて金を購入しているわけではありません。基軸通貨国のアメリカは、ドルの信認によって6000兆円という規模の国債を発行し、世界各国に売却して資金を吸い上げてきました。消費を美徳とした結果、放漫な財政赤字を積み上げ、近年、通貨としての信頼をいちじるしく毀損しています。ドルへの不信感こそが、中央銀行が金を購入する動因です。

 通貨を発行する国が金利を上げるのは、インフレを予防するためです。行きすぎた景気を冷やし、節約をすすめるための手段です。しかしながら、財政赤字が増大すると、金利上昇は国債の利払いに直結します。財政は、加速度的に悪化します。したがって、容易に金利を上げられないという構図が生まれます。

 一般家庭のばあいを、考えてみてください。どの家も、無尽蔵にお金をもっているわけではありません。旅行して散財したら、その分は節約しなければなりません。仮に、ある家だけが輪転機をもっていて、紙幣を無限に印刷できたらどうなるでしょうか?。その家庭だけは、とんでもない贅沢をし、あらゆるものを私物化できます。その結果、通貨はだぶつき、ものの値段は上昇します。始めははっきりしませんが、年を経るごとにひどくなり、やがて誰の目からもあきらかになります。この家の通貨発行権を禁止しないかぎり、インフレはとまりません。

 たとえばトルコ国債の利率は、25%あります。これは、トルコリラが投資対象として魅力があることを意味してはいません。リラに不安があるから、利率を上げているだけです。それでも、信用をうしなった通貨は、他の国の通貨に対して割負けていきます。

 ドルという基軸通貨が国際的な信用を得てきた50年ほどの期間は、ドル金利の上昇は、金価格を実際に下げてきました。こうした状況は、急速に変貌しています。印刷しすぎたドルは、通貨としての信用をなくしはじめています。金は、利率が0という圧倒的な信用構造から成立しています。印刷しすぎたドルの金利が上がることは、通貨不安の表現です。

 金は、信用コストが必要ないので、金利上昇局面では買われる。今後は、こうした構図に変化するはずです。

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