ゴールド、06

 最近、よく目にするデリバティブとはなんでしょうか?

 これを理解しないと、金融資産という全体像がみえてきません。さらに、空売り、レバレッジを考えないと、金融がかかえている問題を充分に知ることができません。ゴールド06、07、08のコラムでは、こうした言葉を整理してみたいと思います

 株式は、社会が評価した企業の価値を株数に応じて分割した資産です。企業価値への請求権で、一般的には債券には属しません。企業が解散、清算されるばあい、資産の分配順位が決められています。1)担保付き債権者、2)一般債権者、3)劣後債権者、4)株主です。株式には、元本返還義務がつけられていません。配当は、企業の裁量権に任され、義務化されていません。したがって、市場が開いているかぎり現金化できる劣後無期限債券とみなせば、大枠では債券とよべます。

 デリバティブ( derivative)とは、現物資産や現物商品などを担保としてつくられた債券を再担保した契約を指します。担保化された債券を再利用するため、「金融派生商品」(financial derivative products)ともよばれます。

 デリバティブ取引は、債券、株式、船荷証券、不動案担保証券などの現物商品や諸権利を取りあつかう事業者が、現物の将来的な価格変動のリスクを回避(ヘッジ)するためにつくられた契約です。担保された債券の一定割合を証拠金として供託し、ある程度の価格変動を他の市場参加者にしてもらう保険(リスクヘッジ)契約です。

 担保が現物資産によっているばあいを、担保明確化資産とよびます。デリバティブの本質は、担保再利用契約装置です。担保の希薄化を通じて、みかけの信用力を膨張させます。したがって、デリバティブ資産は、担保希薄化資産、あるいは、担保不詳化資産に分類されます。

 このコラムと並行して考察しているエプスタイン・ファイルでは、リキッド・ファンディングという非常に不透明な手法がつかわれています。このファンドは、あきらかな担保をもたない、虚構的な担保不詳化資産と考えられます。こうした大事件の基盤をつくった手法は、ますます複雑化し、総額も巨大になっています。

 デリバティブは、リスクヘッジ以外に、投機(スペキュレーション)、裁定取引(アービトラージ)などで、差金決済取や空売りとして利用されています。いずれにせよ、現物資産を担保とする株式などを再担保とて契約します。つまり、デリバティブの本質は、担保を再利用し、希薄化する契約装置です。

 デリバティブ市場は、大きく2つに分類されます。

 店頭デリバティブ(OTC)は、金融商品取引所などの公開市場を通さない方法です。いっぽう、市場(上場)デリバティブは、公開市場を介する取引です。

 取引規模としては、店頭デリバティブが圧倒的に巨大です。この手法は、1980年代初頭に、ユーロカレンシー、ユーロ債市場で急拡大しました。バランスシートに記載されないオフバランス取引がどうどうと行われていました。

 世間の批判を受け、デリバティブの透明化を図ろうとする審議は、さまざまなに行われてきました。しかし、実際には厳しい基準はもうけられず、規制が緩い状態が長くつづきました。2008年、エプスタインがかかわったリキッド・ファンディングをふくむサブプライム危機で社会的に大きな問題となり、証拠金規制は強化されましたが、不透明は部分は多くのこっています。

 デリバティブ市場がどれほど巨大なのか、 国際決済銀行(BIS)の報告書を検討してみます。2022年末の統計によれば、店頭デリバティブ(OTC)名目元本、約 630兆ドル(95京円)、取引所デリバティブ、約100兆ドル(15京円)といわれます。単純に合計すると、110京円という、普通の感覚としては理解しがたい規模です。

 名目元本(Notional)とは、デリバティブ契約の総額を指し、実際にうごくお金ではなく、担保の希薄化を通じて文明が許容している信用の総量ととらえられます。 なかには契約の重複もみとめられ、毎日膨張し、収縮しているので、変動幅は大きいと考えられます。これは「ゴールド、01」でお話した担保明確化資産、20京円の5倍に相当します。

ゴールド、02」 の分析で、金価格は20000ドル、現在の4倍を目指すだろうと記載しました。その根拠として、歴史的にローマ帝国や歴代の中国王朝が、全金融資産の10~20%程度の金を裏付けにしていたことを挙げました。この全金融資産とは、基本的には担保明確化資産を意味します。とは言え、当時すでに手形の再利用などが認められています。我が国でも、江戸時代に武家が前借りした俸禄を担保とし、融資を受けたばあいがあります。したがって、担保希薄化資産もあったはずですが、全体のなかでは、きわめて限定的だったと考えられます。また、近代まで担保なしに貸借契約結ぶことは、不可能でした。

 現代は、デリバティブの担保希薄化により、みかけの金融資産は急速に膨らんでいます。デリバティブ市場、110京円の10%なら、11京円となります。この部分を裏づけるだけで、金価格は11万ドルに上がることになります。

 現在の20倍という桁外れの額になりますので、ワンクッションおいてみた、というのが実際の話です。

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