ギスレーヌ・ノエル・マリオン・マクスウェル(1961~)は、エプスタインの恋人だったとされます。2021年以降、児童性犯罪、児童性的人身売買など罪名で有事判決をうけ、現在服役中です。彼女は、1990年(30歳)ころにエプスタインと出会い、恋愛関係になったとされています。その後も移一貫してエプスタインとの関係をもち、事件の全貌を知る唯一の人間とされています。
ギスレーヌ・マクスウェルは著名なメディア経営者、ロバート・マクスウェルの娘としてフランスで生まれています。オックスフォード大学のなかでも、とりわけ長い歴史をもち、国際色が豊かで、卒業者に政治家などの著名人などが多いことで知られるバリオール・カレッジで、1985年に現代史と言語の学位を取得しています。大学生時代からロンドン社交界で有名になりました。そこで、多くの人脈をきずいたと考えられます。
1993年にエプスタインとともに撮影された写真をみると、黒い短髪をまとめたギスレーヌは30歳をすぎていますが、理知的で美貌です。1986年に父親のロバートがつくったヨットは、「レディー・ギスレーヌ」と命名されています。その船には、ジャグジー、サウナ、ジム、ディスコが装備されていました。資産家の娘で、エリート校に通う美貌の才媛が華やかな時代を駆けぬけたことがよくつたわってきます。
1991年11月、父親、ロバート・マクスウェルは、カナリア諸島周辺の海域で「レディー・ギスレーヌ」から転落し、遺体となって発見されました。この事件は、事故、自殺、他殺をふくめて未解決です。死後、彼は4億ポンド(1030億円)の年金資金を横領したとされました。1992年、彼女のふたりの兄は、年金スキャンダルに関連する詐欺の容疑で起訴されています。1996年1月には、無罪判決が言いわたされています。
1991年、父親の死後、ギレーヌ・マクスウェルは、アメリカ合衆国に移住しました。その前後にエプスタインと出会い、恋愛関係になったようです。この時系列については、さまざまな異論があります。彼女は、ニューヨーク社交界の名士となり、ナオミ・キャンベル、アンドリュー王子、ビル・クリントン、ケリー・ケネディーらと親交をもったといわれています。
ギスレーヌ・マクスウェは、エプスタインの未成年売買春事件で、少女の勧誘や移送などで積極的に関与した事実が判明しています。まだ立件中、公判中の事件もあり、全貌は未解明のままですが、顧問弁護士デイビット・オスカー・マーカスは、高い可能性で彼女が恩赦をうけるだろうと発言しています。その理由は、あきらかにされていません。
ギスレーヌ・マクスウェルは、エプスタインに上流階級への窓口を提供したと考えられています。彼女は、父親をうしなったことでロンドン社交界にいられなくなりました。権力構造から追放されたといえます。しかし、エプスタインの資産をうけることで、ニューヨーク社交界で活躍できました。
メディア王だったロバート・マクスウェルは、情報を媒介してさまざまな権力に接触していたと考えられます。彼の死によって1000億円を超える規模の年金横領事件があかるみになり、一族は社会的信用をうしない、スキャンダルに巻きこまれました。ロバートの死は、諜報機関とも関係があったとも取り沙汰されています。死因が不可解であり、解明できなかった事実から真実を浮かびあげる作業は非常に困難です。とはいえ1000億という巨額を背負うことができるのは、一握りのかぎられた人びとです。そこには、社会の表面にでてこれない闇の権力構造が関与していたと思われます。
ギスレーヌ・マクスウェルの栄華は、闇の金融資産にささえられた虚飾のなかに存在していました。父親の死は、彼女にとって権力の崩壊に映ったと考えられます。ギスレーヌは、エプスタインに父親と同質な暗部をみたのでしょうか?。そうならば、闇の金融資産によってつくられたネットワークと権力構造だと思われます。社交界は、人脈と情報がからみあう、闇の権力の表層部なのでしょう。彼女は、エプスタインによって上流階級に復帰することができました。彼によってあたえられたものは、ギスレーヌがうしなった権力の供給源でした。彼女は、ロンドンとニューヨークという二つの場所で社交家の中心にいたのは事実です。
エプスタインは、アラン・グリーンベルグによって資産家への道をひらかれます。ギレーヌ・マクスウェルによって、上流階級への経路が生まれました。彼は、こうして金融資産という信用構造と、人脈による権力構造を手に入れていく構図がつくられます。
エプスタインは、収容されていた矯正施設で自死したとされています。ここには不明な点が多々あり、全貌は不明です。ギスレーヌ・マクスウェルからみると、父親のロバートの死と二重写しになるはずです。事件性は違いますが、この二つの死はフラクタル的にみえます。エプスタイン事件には、司法の影がふかく関わっています。さらに、表面にはでてこない闇の権力構造が関与していると考えられます。垣間見られるのは、金融の影、権力者の影、司法の影、情報の影で、すべてがかさなっています。さらに、ロバートの父親もエプスタインの両親も、ユダヤ系だったのは興味深い事実です。
ギスレーヌ・マクスウェルは、この事件を権力構造から語れる唯一の人間なのは間違いありません。もしかしたら、司法取引によってほんとうに恩赦にされるかも知れません。しかし、彼女が華やかな社交界に二度ともどれないことだけは間違いないでしょう。
