レバレッジ( leverage)とは、裏づけになる担保を希薄化させることにより実体のない信用をつみ重ね、帳簿上の資本を増幅させる仕組みです。保有する資本以上に取引規模を膨張させ、差額だけで利益と損失を決めるシステムです。レバレッジの本質は、担保希薄化増幅装置(Dilution‑Degree Device)で、帳簿上の資産を増幅させます。 実体をもたないままに担保を再利用する、デリバティブの効力を巨大化する増幅装置として機能しています。
レバレッジという言葉は、「てこ」レバー(lever)から由来しています。てこの中心から片方の距離だけを長くすれば、2倍、3倍の力を生むことができます。理論的には、10倍、100倍、1000倍も可能です。歯車によるトルク効果とも似ていますから、ギアリング(gearing)とも呼ばれます。
「ゴールド、06」で問題にした名目元本(Notional)は、文明が生みだしたデリバティブという担保再利用契約装置で、レバレッジによって担保はさらに希薄化されます。次回、「ゴールド09」で詳述しますが、このコラムでは、担保構造の違いをもとに金融資産を3つのクラスに分割します。
1)担保明確化資産。2)担保希薄化資産。3)担保不詳化資産です。
担保不詳化資産は、文明の外側に生まれた詐欺的資産と位置づけられます。
レバレッジの歴史をたどると、現代金融が抱える脆弱性の根がどこにあるのかがみえてきます。
1)単純レバレッジの時代(~1970年代まで)
レバレッジは、デリバティブの普及とともに本格的に生まれたと考えられます。株式担保融資や信用取引は、企業価値を担保とした現物株式を用いる仕組みです。一般金融では、デリバティブと異なるとされます。しかし、担保を一度でも再利用したとき、デリバティブは成立します。倍率が高いか低いかは本質ではありません。倍率が2未満であれば、小さいレバレッジが効いていると考えるべきです。ペーパーゴールドも株式担保融資も、担保を再利用する以上、構造的にはデリバティブに属します。
レバレッジは、1970年代までは、株式の信用取引に限定されていました。デリバティブが本格的に制度化されると、担保希薄化増幅装置として機能しはじめます。
2)構造的レバレッジの時代(1980~2000年代)
レバレッジは、デリバティブの普及によってさまざまな商品に拡大していきました。先物、オプション、スワップでは、 名目元本(notional)という実体のない参照額 をつかいます。レバレッジは、担保の希薄化増幅装置となり、倍率は跳ね上がりました。先物やオプションのレバレッジは、10~100倍(証拠金として、取引額の 1~10%)に、金利スワップの名目元本は、実資本の 10~50倍に膨らみます。通貨スワップの取引規模は、100倍以上になりました。
たとえば100億円の金利スワップでは、名目元本が契約として示されています。しかし、実際にはその額にみあった固定金利と変動金利の差額だけが交換されます。つまり、100億円は名目として存在するだけです。
この段階で、レバレッジは デリバティブの増幅装置という構造が制度化されました。
3)影のレバレッジの時代(2000年代〜現在)
担保不詳化資産は、文明の信用構造の外に生まれています。すでに明白な担保をもたない、レポ取引、空売り、証券化商品(CDO、ABS)、ヘッジファンドの総合レバレッジ、シャドーバンキングが、みかけ上、資産としてあつかわれます。担保不詳化資産は、デリバティブですがレバレッジの有無を問われません。しかし、詐欺的性格から高倍率のレバレッジが付随します。
| 時代 | レバレッジ倍率 | 担保の性質 | システムの安定性 |
|---|---|---|---|
| 〜1970年代 | 2〜3倍 | 担保希薄化 | 安定 |
| 1980〜2000年代 | 10〜50倍 | 担保希薄化 | 不安定化の始まり |
| 2000〜現在 | 20〜100倍以上 | 担保不詳化 | 極度に脆弱 |
現代の金融が非常に危ういのは、担保設定があやふやになっているからです。担保希薄化資産、担保不詳化資産が膨張し、裏づけになる担保が決定的に不足しています。その結果、小さな損失が巨大な連鎖を生み、流動性が一瞬で蒸発します。
こうした資産を運用している金融機関の破綻は、金融システム全体に波及し得る状況が生まれています。
