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ゴールド、09

ゴールド、01」からつづくコラムでは、文明を人類の秩序構造として定義しています。私たちの文明では、信用構造は、金融資産を基礎に階層化されています。信用の裏づけになる担保は、再利用され、希薄化され、みかけ上の資産を大きくしてきました。

 ここまでの論議では、信用構造と金融資産が入り組んでいます。つきつめるなら、信用構造は文明の内部骨格です。金融資産は、信用によって生み出された派生物です。文明が築いた、信用構造の表層部分です。したがって、資産を信用という観点で整理し直す必要があります。

 信用の裏づけるコアは、不動産と金現物です。私たちの文明において、両者は資産の最終的な価値を担保しています。しかし、不動産は流動性にとぼしく、現金化するには多くの時間が必要なため、また金現物は信用構造を担保する側として、純粋な金融資産としては除外されます。

 金融資産は、つぎの3つのクラスに分類されます。

1)担保明確化資産(Clear‑Collateral Assets)、概算総額20京円。

2)担保希薄化資産(Collateralー Dilution Assets)、概算総額40京円。

3)担保不詳化資産(Unspecified‑Collateral Assets)、概算総額70京円。

 この各資産クラスについて整理します。

1)担保明確化資産は、信用の裏づけとなる担保が本来の形で機能している金融資産です。つまり、派生商品は一切ふくまれず、したがってレバリッジはつけられない資産です。担保明確化資産は、文明の基礎信用層に該当します。

 具体的には、上場株式、未上場株式などの株式現物。一般的な国債、社債、地方債、財投債、事業債などのストレート債券。預金。銀行貸し出し(ローン)。投資信託、ETF、MMF。売掛金、買掛金、手形などの商業信用。中央銀行のマネタリーベース、などが考えられます。金融資産から流動性の低さによって除かれた不動産の一部は、リートという形式を取って、ここに組みこまれています。

2)担保希薄化資産は、信用を裏づける担保が再利用されることにより希薄化(レバレッジ)された商品です。担保濃度が下がることによって、信用が増幅されたようにみえる資産クラスでえす。

 具体的には、 MBS、ABS、CLO、CMBSなどの一次証券化商品(Securitized Products)。レバレッジETF(2倍、3倍)、インバースETF、コモディティ連動レバETF(原油・金・銀など)のレバレッジつき投資信託、ETF。先物取引(Futures)、オプション取引(Options)などの、取引所CFD(差金決済取引)。証拠金を用いる標準化デリバティブ(取引所取引)。信用買い(証拠金を入れて株を買う)、信用売り(空売り)などの貸株、借株(Securities Lending)信用取引、証券金融。レポ取引(国債などを担保にした短期資金調達)、シンプルな再レポ(同一担保の限定的な再利用)などのレポ取引(Repo)とその一次的な再利用。住宅ローン等を担保にしたカバードボンド(Covered Bonds)。これらが該当します。たとえばペーパーゴールドは、現物金を証券化した再証券です。したがって、現物金の担保性は再利用され、希薄化されています。デリバティブ商品は、大部分は2)となり、一部は3)に属すことになります。

3)担保不詳化資産は、担保構造がすでに不詳となっている資産クラスです。この資産クラスは、文明の信用構造の枠外に位置しています。すべて派生商品ですが、レバレッジの有無は問われません。通常、詐欺的目的でつくられるために高倍率のレバレッジがつく資産クラスです。

 具体的には、一次証券化商品(MBS・ABS・CLO)をさらに再パッケージした再証券化商品(Re‑securitized Products)。 CDS(Credit Default Swap)とその派生構造。同一担保の多重再利用、プライムブローカーによる担保再利用など、 担保が何度も再利用され、誰のものか不明になる再担保化チェーン(Re‑hypothecation Chains)。SPV(特別目的会社)、SIV、ABCPコンジット(資産担保証券の短期ファンディング)です。

 この資産クラスは、担保構造を前提としないため、 見かけ上、バランスシート外で信用を増殖する影の器として機能します。エプスタインのリキッド・ファンディングは、プロトタイプだったと考えられます。店頭スワップ(IRS、通貨スワップ)、店頭オプション、店頭CFD、店頭フォワードなどは、担保が限定的で、実体のない差金決済が中心です。つまり名目元本だけが巨大化する、差金決済型の店頭デリバティブ(OTC Derivatives)です。海外FX(100~1000倍)、店頭CFD(差金決済)などは、 原資産はありますが実体とは無関係に信用だけが増殖する、 店頭レバレッジFX(高倍率の証拠金取引)です。さらに、裸の空売り(Naked Short Selling)、貸株の再貸し(再々貸し)などショートポジションの空売りの連鎖(ショートチェーン)は、実体株がどこにあるのか不明になっています。

 この分類は、信用の源泉となる担保構造に基づいてつくられています。したがって、金融業界の分類とはまったく体系が違いますが、文明が生みだした全商品を網羅することができます。1)、2)、3)の総額は、130京円という規模になります。

 歴史的には、1)担保明確化資産の10~20%を、金が裏づけしてきました。具体的には、2~4京円です。金価格としては、2~4万ドルです。

 2)担保希薄化資産、3)担保不詳化資産は、アイデアは古くからあった詐欺の手法でしたが、近代になって合法的につかう方法が発明されました。

 2)は、希薄化されながらも信用と関わりがあるとすれば、60京円規模の金による裏づけが必要となります。金価格としては、6万ドルです。担保不詳化資産が、1)、2)を合算した資産より大きい事実から考えるなら、最大130京円の20%、26京円規模の裏づけが必要となります。金価格としては26万ドルとなり、現在の50倍以上です。これは事実上裏づけが困難だということを示しています。3)の部分は、がんらい裏づけられることを前提としていませんから、つねに崩壊危機を抱えていることを意味します。

 いずれにせよ、こうした商品が社会的に流通している以上、なんらかの裏づけがなければ破綻してしまいます。この50年間は、アメリカの信用に依存してきました。

 基軸通貨が揺らぎ始めた現在、裏づけは原点の金に回帰しつつあります。

日本語名称英語名称構造的意味
担保明確化資産Clear‑Collateral Assets担保が一対一で明確、レバなし、文明の基礎信用層
担保希薄化資産Collateral‑Diluted Assets担保はあるが、証券化、レバレッジで信用が膨張
担保不詳化資産Unspecified‑Collateral Assets担保の所在が不明、再証券化、再担保化、店頭デリバ等

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