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エプスタイン.ファイル、07

 このコラムでは、エプスタインが考案したリキッド・ファンディングが、いかに画期的な発明だったかを論点にしたいと思います。

ゴールド、08」で、レバレッジの歴史的な経緯を考察しました。

 20世紀初頭のレバレッジは、1)ブローカーズローン、2)株式担保融資、3)信用取引などをさし、倍率が2未満に抑制され、低倍率の担保希薄化を意味していました。

 2000年に設立されたリキッド・ファンディングは、レバレッジ文明の転換点でした。具体的には、1)原資産をもたず、2)差額決済を採用し、3)担保を再利用し、4)資産を名目元本の外側で膨張させました。

 リキッド・ファンディングは、BIS にも記載できない実体のない資産を担保化した「構造的」レバレッジといえます。つまり、レバレッジを担保希薄化装置から、担保不詳化装置に転換した最初のファンドでした。

 エプスタインは、詐欺的商品を合法的にあつかう手法を発明したのです。

 レバレッジは、派生商品(デリバティブ、担保債利用契約装置)にしかつけられません。なぜなら、担保を再利用することでのみ有効化するからです。

 レバレッジの本質について、もうすこし検討を加えます。

 レバレッジを利用すると、運営会社は以下のような利益を得ます。

1)管理報酬(あつかう資産の増減にかかわらず一定)、2)成功報酬( 上がったときだけ発生)、3)スプレッド( レポ、証券化による差額)です。

 あつかう総資産が変わらなくても、運営側はリスクを負わずに利益が得られます。いっぽう投資家は、もっているだけで、1)3)を支払わねばならない契約です。レバレッジは、投資家の損失を増幅し、運営側の利益を固定化できます。レバレッジの倍率が増えれば、投資家の損失は増幅されます。いっぽう運営会社は、スプレッドが上昇し、固定収入が増える仕組みです。単純に考えて、投資家の利益が運営会社に自動的に流れる仕組みといってもいいでしょう。

 リキッド・ファンディングの最終的なレバレッジは、17倍でした。これは、利益が17倍になるのではなく、このポジションを維持するために17倍のコストが発生するという意味です。手数料は利率なので、あらたなコストが発生する分だけ、運営会社の利益は増加します。

 表向きは禁止されていますが、現在でも17倍級 のレバレッジは、形を変えて普通に存在します。 1) レポ(国債を担保に資金を借りる仕組み)では、10~50倍は普通です。2) 証券化(SPV、CLO、MBS、ABS)では、実体の50~60倍のレバリッジをかけます。3)スワップでは、名目元本が実体の 100倍以上 になります。4) ヘッジファンドの総合レバレッジでは、20~40倍が普通です。

 当局は、証券会社のレバレッジ、銀行のレバレッジ比率、個人の信用取引は3倍までという形で規制しています。しかし、いままでに挙げた形式を用いれば、表面上の倍率を隠したまま、実質17倍以上の商品をつくることができます。いまのレバレッジは「見えない」だけで、むしろ危険ともいえます。

 リキッド・ファンディング は、シャドーバンキングのプロトタイプだったといえます。ベア・スターンズを通して、 ウォール街、 世界金融へとひろがりました。

 ベア・スターンズが破綻した原因は、1)レポ市場の信用収縮、2)証券化商品の価値崩壊、3)オフバランスの連鎖、4)高倍率レバレッジの逆回転、などが考えられます。

  リキッド・ファンディング の構造が、ベア・スターンズ 全体に拡大し、 サブプライム危機として破裂したのが 2008年の崩壊だった考えられます。

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