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貯蓄率

 家計貯蓄率とは、貯蓄額を可処分所得(個人が自由に消費できる所得)で割った比率です。貯蓄には、預金や投資がふくまれます。

 日本は貯蓄率が高い、とよく話題にされます。日本人が金持ちというのも、過去はともかく現在では眉唾です。こうした話題は、つねに浪費大国アメリカとの比較で成立しています。基軸通貨国のアメリカは、世界中から労働力や消費財などの「富」が集中する結果、いびつな構造をかかえています。ものが常時あふれているために、消費が美徳になります。

 アメリカの家計貯蓄率は、3~5%です。コロナ給付金時には、一時的に20%を越えていたいました。その後は、マイナス圏に落ち込むこともあります。アメリカ人は、貯蓄しないのではなく、借金で生活しています。これは「ストック」ではなく、「フロー」で生きているとも表現できます。こうした異様な国と比較しても、ほとんど意味をもっていません。

  OECD(経済協力開発機構)のデータから日本の家計貯蓄率をみてみます。 1990年代は、10~15%と高い数字でした。しかし、2025年は、4.1%です。2025年の統計では、

 1位、スウェーデン、16%

 2位、ハンガリー、14.3%

 3位、チェコ、13.7%

 4位、フランス、12.8%、とつづいています。

 欧州の多くは、8~16%と高くなっています。計算方法が必ずしも同一でないので、数字は豊かさと直結しているわけではありません。しかし、日本の4.1%は、アメリカ4.7%、カナダ4.7%よりわずかにひくく、OECD、加盟国38ヵ国のなかで30位前後です。つまり、 日本が世界の国々と比べて貯蓄率が高かったのは過去の話で、現在はアメリカ以下になっている事実は重大です。

 貯蓄率の差は、年数をかけて貯蓄という金融資産にかわり、やがて不動産や相続をふくむ資産(ストック)として固定化されます。したがって貯蓄の話は、最終的には資産の論議にいきつきます。

 日銀の資料では、2025年12月末時点で、日本の家計金融資産は2351兆円だと発表されています。日本の総人口は、1億2400万人と推計されますので、国民ひとりあたり1895万円です。

 この数字だけをみると、老後の2000万円問題も杞憂とみなせます。しかし、もうすこし精査する必要があります。

 金融広報中央委員会などの統計では、日本では、上位10%が家計資産の60%を保有しています。さらに総務省の家計調査では、 下位20%の貯蓄額の中央値は、「ゼロ円」 という衝撃的な数字がでています。

 これは単純に、「貯金がない」という意味ではありません。統計上の「貯蓄額」は、貯蓄(預金、保険、金融資産)から、 負債(借金、ローン)をひいた金額です。10万円の貯金をもっていても、10万円のカードローンがあれば、貯蓄額は0円になります。

 こうした問題は、日本の資産構成を考慮しないと、意味している事実がみえません。前回の「生活保護」からはじまるコラムは、貯蓄率の構造を検証し、貧困問題を考えます。

 次回は、「貯蓄大国」日本の真実を検討してみます。

                          由布木秀

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