作品番号14「仏陀の弟子たち」を改訂しました。
この小説の舞台は、インドのラージギルにある日本山妙法寺です。
私は20代後半、インドを放浪していたときに、この寺に宿泊させてもらいました。住職は、50歳くらいの芸大をでた彫刻家でした。その話を旅行中に聞きおよび、面会に行ったのでした。彼とはいっしょに露天風呂に行き、リムカという炭酸飲料水をごちそうになりました。
そのときの思い出が、ずっと脳裏に焼きついています。
2005年、「仏陀の弟子たち」という小説をかきました。2010年から改訂を重ね、幾度もなおしては文学賞に提出してみました。一度も予選を通過しませんでしたが、投稿する度に改訂をくりかえしました。この小説ができるためには、16期、250単位(375時間)が必要でした。創作ノートの枚数は、60枚です。
日本山妙法寺は、藤井日達により創設されました。仏舎利塔を世界中に建立し、成田新東京国際空港、建設反対運動でも滑走路に塔を建てたことでも有名です。
ナグプールでアンベードカルの意志をついでネオブッデストをひきいている佐々井秀嶺(1935~)については、この小説をかいていく過程で知りました。インド仏教徒の総帥を自認する藤井日達には、たいへん目障りな存在だったようです。
日達は1985年に没し、享年100だったことになります。
インドには、カーストが実在します。ヴァルナ(皮膚の色という意味)は、多様なものから構成されています。宗教カーストは、バラモン(僧侶階層)、クシャトリア(王侯、貴族、武士階層)、ヴァイシャ(商人階層)とつづきます。これら3ヴァルナは、生後、儀式を行ってヒンドゥーに生まれ変わるので、再生族とよばれます。4番目のヴァルナ、シュードラ(奴隷)は、彼らにつかえる使命をもって生まれ、そのまま死ぬので一生族といわれます。
しかし、ヴァルナはこれで終わりません。この枠に入れない者たちが、ダリッド(不可触民)です。インド憲法の制定にかかわったアンベードカル(1891~1956)は、ダリッド出身でした。彼は、ヒンドゥー教の枠組みからのがれるために、ナグプールで50万人のダリッドをまとめ、仏教徒に集団改宗する道を選択しました。彼らは、ネオブッデストとよばれています。
仏陀は、出自については、平等主義をつらぬきました。仏教は、さまざまに変貌しましたが、この点だけは譲らなかったのでインドを追放されました。
インドは、宗教の坩堝とよばれています。あらゆる宗教が混在していますが、ほんらいヴァルナを認めていないイスラム教もカーストを内包しています。作品番号36.「ホテル・ウエルカム」では、主人公はベナレス(バラナシ)の繁華街、ゴドリアにあるイスラム教徒が経営するホテルに泊まっています。そこの家族は、イスラムでもっともカーストが高いアシュラーフという階層に属しています。
イスラムの階層制度に触れた書籍は、みつけられません。しかし、事実はそうなのです。ヒンドゥー教のカースト制度を否定して生まれた、ジャイナ教、シーク教も内部に階層構造をかかえています。また、キリスト教会ですら、カーストによって4つにわけられ、さらにダリッド専用の教会が存在するといわれています。
カーストを明確に否定する仏教徒は、ヒンドゥー教では、ダリッドよりもさらに低い第6のヴァルナに属するといわれます。こうした制度のなかで仏教を布教するのは、たいへん難しいと思われます。
インドを旅するのは、こうした歴史を考えるということです。
自分の出自を問い直すことです。そのなかで、日本がどうあるべきかが理解できるはずです。インドを、ただ不潔で、たくさんの人がいて命の価値が低い国と考えるなら、他国民から私たちも同じようにみられることを覚悟しなければなりません。
